自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
その時、鍛練場がにわかに騒がしくなった。振り返ったカイスが「げっ」と声を上げた。リリアーヌもカイスの視線の先にある人物に視線を向けると、そこにはグランツ様が立っていた。
こちららに気づいたグランツ様が、大股でズンズンとこちらに近づいてくる。その顔の眉間には深い皺が刻まれていた。
グランツ様?
キョトンとしていたリリアーヌの前までやって来たグランツは、カイスの手に握られていたリリアーヌの手をとった。そしてカイスを睨みつける。
「カイス貴様、何をやっている?」
いつにも増して低い声のグランツに、カイスが震え上がる。
「あっ……その……こちらのお嬢さんが差し入れを持ってきてくれたので、お礼を言っていました」
それを聞いたグランツ様がこちらに視線を向けた。
「リリアーヌ、本当か?」
その問いにコクリと頷いてみせる。すると「そうか……」と恐ろしく低かったグランツ様の声がすこしだけ元に戻った気がした。
「グランツ様、報告もせずに申し訳ありません。なかなかお帰りになられないので、心配でこちらから来てしまいました」
騎士団の鍛練場の視察に来たものの、グランツ様を心配していたことは本当のことなのだ。
「…………」
私の話を聞いて黙っているグランツ様……もしかして怒っている……。