自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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リリアーヌは黒フードの男達を討伐し、シンと静まり返った会場内で冷や汗を流していた。自分のやらかしてしまった失敗に、今更気づいてももう遅い。血まみれのドレス、転がる黒フードの男達……。後ろからグランツ様の声が響き渡る。
「黒フードの男達を全員拘束後、怪我をした者の救助を!」
一斉に動き出す騎士達を横目に動けずにいると、サラに腕を引かれた。
「リリアーヌ様、こちらへ」
サラに連れてこられたのは、会場に入るときに使用した秘密の通路だった。
「何を呆けているのですか。会場内は混乱しています。今なら誰にも気づかれません。急いで下さい」
「でも……」
「大丈夫ですから。急いで下さい」
リリアーヌはサラに促されるまま、その場を後にした。そこからはどうやって帰って来たのか良く覚えていない。サラに言われるまま何とか足を動かし、気づけば馬車に揺られていた。馬車内でサラに血を拭われ、着替えさせられ、言われるがまま、されるがままでいると、いつの間にか屋敷に帰ってきていた。