自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
そっと壁の花になりながら、夜会の様子を観察しているとグランツ様の隣にはあの方……ローズ様が立っていた。ローズ様が頬を染めながら、その赤い唇でグランツ様の名を呼ぶ。その声に導かれるように二人が見つめ合う。ご婚約おめでとうございますと誰かが言った。
うそ……。
奈落の底に落とされた気分だった。
幸せそうな二人をそれ以上見ていることが出来ずに顔を伏せた。そこからは立っていることさえ難しく、よろけながら馬車に逃げ込んだのを覚えている。
はぁーー。
私は大きく溜め息を付いた。
ローズ様は淑女の鏡で、私は鮮血姫。
私とローズ様とでは雲泥の差があり、対等にはなれない。
少しでもローズ様に近づきたいと、リリアーヌはある噂を流した。辺境伯の鮮血姫の死を……。それからは自分を殺し、必死に淑女たらんことを自分にかし、マナーを身につけた。グランツ様を思っていれば何も苦にはならなかった。淑女の鏡とまではいかなくても、それなりに見えるようにはなったはずだったのに……。自分からばらしてしまった。
こっそり守るつもりでいたのに、あんなに堂々と剣を振るってしまった。いつも剣を手にすると、我を忘れてしまう。ただあの人を守りたい。それだけを思い、前に突き進んでしまうのだ。
「はぁーー」
本日何度目か分からないほどの溜め息を付いた。