自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
グランツ様は王太子殿下生誕祭の日から5日経っても帰って来ない。そのせいで余計にあれこれと考えてしまう。
こんな淑女とほど遠い女は妻にふさわしくないと、離縁させられてしまうだろうか。
もう少しあなたの側にいたかった。
窓の外をボーッと眺めていると、外が慌ただしくなっているのが見えた。どうしたのだろうと、そのまま外を眺めているとサラがノックをした後、部屋に入ってきた。
「リリアーヌ様、グランツ様がお帰りになられるそうです」
「……そう」
ああ……とうとうこの日がやって来てしまった。
リリアーヌはグランツ様を出迎えるため、ドレスに着替えると玄関へと向かった。程なくして、馬のひずめの音が聞こえてくると、玄関の扉が開いた。リリアーヌは頭を下げたまま、グランツ様を出迎える。一瞬の静寂の後、頭上から低く心地よく響く声が聞こえてきた。
「リリアーヌ、俺の執務室へ」
「はい……」
私に拒否権は無い。
リリアーヌは黙って歩いて行くグランツ様の後ろをついて行く。
グランツ様の背中を見ながら、リリアーヌは思いにふけった。
もうすぐ、この距離で歩く事さえも許されなくなってしまうのだろうか?
6歳のあの日から、あなたを思ってきたというのに……。
執務室の扉が開かれる。
大罪でも犯し、断罪される死刑囚の様な面持ちでリリアーヌは執務室に入った。リリアーヌはグランツが執務室の椅子に座るのを待ってから、右膝を軽く折りカーテシーで頭を垂れた。その姿は完璧な淑女の姿だった。
このまま時間が止まってしまえば良いのに……。そんな事を考えていても、時間は一刻一刻と進む。リリアーヌは頭を垂れたままの状態でその時を待った。
グランツが離縁の言葉を言い放つその瞬間を……。