自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

「リリアーヌ……」

 グランツ様が低いバリトンボイスの声で私の名を呼ぶ。昔の彼の声はもう少し高い声だった。私を呼ぶ大人な艶のある低い声に胸が高鳴った。これから離縁を言い渡されるというのに、その声一つで私の心は躍り出す。

 そんな私の様子には気づきもしないグランツ様が、スッと息を吸い込んだのが見えた。

 ジワリと瞳に涙が溜まっていく。私は離縁の言葉を聞く覚悟を決め、体に力を入れた。

「リリアーヌ、明日王城に呼ばれている」

 ん?

 あれ?

 離縁は?

 王城?

「はい……行ってらっしゃいませ」

「リリアーヌも一緒にだ」

「……はい?」

 意味が分からずキョトンとしながら顔を上げると、グランツ様の顔がすぐ近くにあった。椅子に座っていたはずのグランツ様がいつの間にか、カーテシーで顔を伏せていた私の前までやって来ていたのだ。

 ちっ……近い。

 ここまで近くでグランツ様の顔を見るのは結婚式での近いのキス以来だった。

 金色に光る瞳、スッと通った鼻筋、形の良い唇はきつく引き結ばれている。ああ素晴らしいわ……顔のパーツが全て完璧な場所に配置されている。そしてその顔の傷……それがグランツ様の魅力を引き立てている。グランツ様の格好良さに思わず見とれてしまうのは仕方が無いことだろう。

 こんなに素敵な人を目の前にして見とれずにはいられない。

 それにしても離縁を言い渡されると思っていたのに、王城?

 リリアーヌは潤んだ瞳のままコテンと首を傾げてみると、グランツ様は右手で口元を隠したまま後ろを向いてしまった。

「明日は王城に行く。詳しいことは明日話す、今日はゆっくりと休みなさい」

 グランツ様はそう言うと、執務机に向かい仕事を始めてしまった。

 王城って、どういうこと?



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