自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 私がグランツ様と出会ったのは12年前、私が6歳の時だった。

 辺境伯領で行われた祭りで、私は貴族の娘だというのに護衛をまき、一人で祭りを楽しんでいた。

 みんな笑顔だし、食べ物は美味しいし、お祭り楽しい。

 串焼きをほおばりながら顔を上げると、誰もが笑顔の祭りの最中、一人トボトボと歩く赤髪の少年を見かける。

 あのお兄ちゃん、お祭りなのにつまらなそう。

 リリアーヌは思わず赤髪の少年に話しかけた。

「お兄ちゃんどうしたの?お祭りつまらない?」

「…………」

 無言でこちらを見ている少年の瞳には、涙の膜が張り今にもこぼれ落ちそうな状態だった。ゆらゆらと揺れる金色の瞳がとても綺麗で、まるで琥珀色のアメ玉みたいに見えた。

「お兄ちゃん……嫌なことでもあった?」

「僕は出来損ないなんだ……」

「誰かにそう言われたの?」

 グッと両手を握り絞める赤髪お兄ちゃん。

「僕は何をやっても普通なんだ。頭も普通だし、剣を持っても普通……父様はこんな俺に興味が無い」

「ふぅーん。普通ってダメなの?リリーよく分かんない。そんなことより一緒に遊ぼうよ」

 リリアーヌは少年の手を引くと、近くに落ちていた木の棒を手に取り、ブンブンと振り回した。

「うん。これでいいかな?お兄ちゃんにはこっちの棒をあげるね。剣の練習だよ」

 リリアーヌは少年に向かって、木の棒を振り下ろした。少年はハッとした後、咄嗟に木の枝を構える。そこから二人の打ち合いが始まった。パンパンと木の枝がぶつかるたびにいい音が鳴る。

 へぇー。

 お兄ちゃん全然弱くないじゃん。

 でもこれでお終い。



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