自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 あの日、グランツ様は帰ってこなかった。それから私達のギクシャクとした関係は続いている。今もグランツ様の執務室で書類の整理をしているのだが、必要なこと以外言葉を交わすことは無い。

 重々しい空気に押しつぶされそうだ。

 これも私がグランツ様の手を払いのけ、冷たい言葉をぶつけてしまったせい。

 はーッと溜め息を付いたとき、控えめなノック音が聞こえてきた。

「失礼いたします。夕食を持って参りました」

 副団長のアロンと共にサラが夕食を持ってきてくれた。

 あまり食べたくはないのだけど……。

 最近食事が喉を通らず食欲がない。

 少しずつ(やつ)れていくリリアーヌの姿を見たルーニが、心配して今日も声を掛けてくれた。ルーニは心配性だ。

 はぁー。

 グランツ様に気づかれないように、ゆっくりと溜め息を付いた。

 机に並べられているのは美味しそうな料理なのだが、手が出ない。

「…………」

「…………」

 特に会話も無く黙々と食事をするグランツ様。手の動かないリリアーヌの姿を見たグランツ様が、食事の手を止めた。

「食が進まないか?」

「あっ……すみません」

「…………」

 そしてまた沈黙……。




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