自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
あなたと離縁などしたくないと叫びたいのに、感情を抑えることに必死で声が出せない。黙ったまま、小刻みに震えていると、グランツ様が口を開いた。
「俺は顔に傷がある野蛮で人殺しの騎士団長だ。リリアーヌ……君にふさわしい人間ではない」
グランツ様は一体何を言っているのだろう?
グランツ様が野蛮な人殺しなら、私だって一緒だ。私は辺境の鮮血姫。戦場で沢山の人々を殺めてきた。リリアーヌはグランツ様の話を聞きながら首をこれでもかと左右に振った。
「すまないリリアーヌ……可哀想に。こんな俺の所へ無理矢理嫁がされて、辛かっただろう」
そんなこと無い。
私は嬉しかった。
無理矢理なんかじゃ無い。
辛くなんて無い。
そう思っていても、声が出せない。
ハッハッと呼吸を繰り返し、体から力を抜きたい。喉を開かせたい。
このまま話を聞いているだけでは、誤解を生んだまま離縁されてしまう。
ダメ……ダメよ。
グランツ様、それ以上はダメ!
「リリアーヌ、俺と離縁しよ……」
そこまでグランツ様が言葉にしたところで、それを遮るようにリリアーヌは机を叩いて立ち上がった。
「…………」
「リリアーヌ?」
「……めっ……」
「えっ……」
「……だっ……ダメ……ダメです。離縁なんて……」
「しかし……」
言い淀むグランツに対し、開いてきた喉に力お入れ、一気にまくし立てた。