自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 これはどういうことだ?

「グランツ様……どうか、私を捨てないで……」

 泣きながらそう訴えるリリアーヌ……。

 カタカタと震えながらこちらに思いをぶつけるいじらしい姿に、体が熱くなる。

 俺は……離縁がしたいわけでは無い。

 その思いに応えてやりたい。

 でも今は……。

 リリアーヌに答えられない。

 くそっ!ダメなんだ。

 しかし、体は勝手に動いていた。

「リリアーヌ……」

 グランツはリリアーヌに駆け寄り、目の前で震えるその体を、そっと包み込む様に抱きしめた。

「リリアーヌすまない。少しだけ待ってもらえるか?俺は……」

 そこまで言って俺は口をつぐんだ。

 ダメだ。

 これ以上は……。

 そんな俺を見て、リリアーヌは泣きながら、無理矢理に微笑んで見せた。

「グランツ様、良いのです。あなたがこうして抱きしめてくれるだけで幸せです。グランツ様の心がローズ様にあっても……」

「違う!!」

 俺はリリアーヌの言葉を聞き、声を荒げた。それから奥歯を噛みしめ、グッと言葉を詰まらせた。

 リリアーヌは自分への思いを素直に口にしてくれたというのに……。

 どうすれば……。

「グランツ様……?」

 心配そうにこちらを覗き込んでくるリリアーヌの姿に、胸が締め付けられる。

「リリアーヌ、違う……違うんだ。三日……いや、一日で良い。俺に時間をくれ。必ず説明をする」

 グランツはリリアーヌを抱きしめていた腕に力を入れた。するとリリアーヌは俺の腕の中でコクリと頷いた。





< 87 / 140 >

この作品をシェア

pagetop