自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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それはガルレシア王国との戦争が始まる前のことだった。
ルーレンス王国王太子である俺に、隣国であるガルレシア王国の第二王女との婚約が決まった。王族として国の利益のためのこの婚約は絶対に破棄することは出来ない。政略結婚をすることになることは、この世に生を受けたときからわかりきっていたこと……。
それは俺の使命。
そう思ってきた。
思っていたんだ。
しかし俺は出会ってしまった。
自分よりも、この国よりも大切な人に……。
ああ……ローズ。
きみと共に歩むことが出来ないなんて、この世は地獄でしか無い。
愛しいきみの隣に立つ男は、何て幸運なことか……。
嫌だ。
俺以外の人間がきみの隣に立つのを、俺は見ることなど出来ない。
一体どうすれば……。
希望はある。
このまま戦争が始まれば、ガルレシア王国の第二王女との婚約は破棄となるだろう。
戦争が始まれば民を苦しめることになる。
それでも俺は……。
それまで俺は貴族の男どもからローズを守らなければならない。婚約などされたら王族といえども手出しは出来ない。そのためには隠れ蓑となる者がほしい。
俺は幼馴染みであるグランツ・サライヤスにローズの偽の婚約者として表に立って欲しいと、お願い……いや、命令した。
これはお願いでは無く命令だ。
どうしても手元にローズを置いておきたいという、俺の願いをグランツは聞き入れてくれた。
それからまもなく戦争が始まり、ガルレシア王国の第二王女との婚約は破棄された。
戦争が終結し、親友であるグランツが戦場から帰ってきた。
その顔にはおおきな傷が出来ていた。
戦争という戦場で、どれほどのことがあったのか……親友の風貌が変わるほどの激戦。
グランツの顔に出来た大きな傷に、ローズが悲鳴を上げた。それは恐怖では無く、幼馴染みを心配した悲鳴だったが、噂は広がっていく。
グランツの顔の傷にローズ悲鳴を上げ気絶した。
鬼神がローズを無理矢理に婚約者にした。
英雄などと呼ばれているがただの人殺し。
グランツに対する侮辱とも取れる噂が広がっていった。