自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 リリアーヌとグランツはこの店に入る前から声に出して喋っていないが、コミュニケーションが取れている。それは手を使って会話が出来ないかと二人で考えたものだった。これは離れた場所でも手元さえ見ることが出来ればコミュニケーションが取れるハンドサインだ。咄嗟の作戦の時などには声を出さずに作戦を随行出来るのではと考えていた。

 実践してみると案外に使える。

 自分たち以外には分からないのがまた良い。

 二人だけの秘密の会話……。

 私はグランツ様に『好き』と手を動かしてみた。

 すると水を飲んでいたグランツ様が、ゴフッと吹き出した。

 悪戯が成功した子供のように、ふふふっとリリアーヌは声を出して笑った。

 その時、ウエイトレスの少女が「ドンッ」と音を立てて、皿を机の上に置いた。グランツ様と顔を見合わせると、少女は私を睨みつけながら奥へと去って行った。

 もしかしてグランツ様のファンの子だったのかしら?

 それなら私がグランツ様と一緒にいるのは面白く無いに違いない。

 だからといっても、グランツ様は渡しませんけどね。

 ふんすっ!と、リリアーヌは鼻息を荒くしていると、グランツ様に声を掛けられた。

「リリアーヌ、食事にしよう」

「はい」

 それから二人は食事を堪能した。

 町の様子はおかしいけれど、今日は初デートなのだ。

 楽しまなければそんだよね。





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