自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
二人は食事を終えると、会計を済ませ外に出た。すると、外には沢山の人々が集まっていた。その姿は鬼気迫るものがあり、リリアーヌは驚いてしまう。
「まあ、皆さんそろってどうなさいましたか?」
疑問に思ったことを口にすると、先ほど食事を運んでくれた少女が一緒に外に出てきて、私を睨みながら声を荒げた。
「どうなさいましたかって……。あなたは白昼堂々と浮気ってどういうことですか?!」
「へ……?浮気……ですか?」
「団長様も、団長様ですよ!碧青の騎士様と言う奥様がいらっしゃるのに、堂々と浮気するなんてガッカリです」
まくし立てるように話す少女に同意し、回りにいた人々がウンウンと頷いている。
これは……。
「まさかと思いますが、私達が浮気をしているとおっしゃっています?」
「違うんですか?!」
それを聞いたリリアーヌとグランツは顔を見合わせ、プッと吹き出してしまう。
「何が可笑しいんですか!」
少女は怒りで顔を赤くさせながら怒っているが、リリアーヌ達はそれがおかしくて仕方が無かった。その時、「キャーー!」と悲鳴が聞こえてきた。それと同時に「泥棒ー!」という声も聞こえてくる。それにすぐ反応したのはグランツ様だった。
「リリアーヌはここで待っていてくれ。その姿では走れないだろう」
「でも……」
「大丈夫だ。行ってくる」
グランツ様は颯爽とその場を離れ、声のした方へと走って行ってしまった。
今日のリリアーヌは帯剣していない。そのため一緒に行ってもグランツ様の足手まといになる可能性が高い。ここで大人しく待っていた方が正解だろう。
リリアーヌはとりあえずここでグランツを待つという選択したその時、悲鳴が徐々に近づいて来ていることに気づいた。
まさかグランツ様に何かあった?
人々の間を縫う様にして、一人の男がこちらへと向かってきていた。その手には血の付いたナイフが……。
その血は……。
リリアーヌは咄嗟に近くにあったホウキを手にし、男の方へと飛び出した。
「へへへ……お嬢さん。そこをどいた方が良い。その綺麗な顔に傷が付くぜ」