【短編】夏空よりも眩しいきみへ
『足立って、お前のこと好きらしいじゃん』
小5の頃、そんな噂が流れはじめて、一瞬、彼女とどんな風に接していいのかわからなくなって。
『菖!』
そう彼女に呼ばれた時、目を逸らしてしまった。
そんな俺を見て、羽奈はぎこちない笑顔で言った。
『みんなが言ってるの、あれ、嘘だからね。気にしないで!』
その日を境に、羽奈から俺に話しかけてくることはなくなった。目が合ったと思っても必ず逸らされたまま進級。
小6からはクラスが離れたまま、中学を卒業した。
それからお互い高校生になり、5年ぶりに同じクラスになって、4ヶ月が過ぎようとしている。
羽奈が俺と同じ高校を受験すると知った時は内心嬉しくてしょうがなかったが、久しぶりに声をかけるとなると、すごく勇気のいることで。
なんだかんだ、羽奈とはまだ一言も話せていない。
自分のヘタレ加減に呆れてしまう。
あの噂から時間が経つたびに、噂が本当だったらどんなにいいだろうと思っていた。
俺も、羽奈が好きだって言えていたらって。
でも、噂が本当に嘘だったら?
羽奈にとっては迷惑な話しだったら?
そんな後悔と不安がぐちゃぐちゃになって俺を襲った。