【短編】夏空よりも眩しいきみへ
「あの〜四谷菖くんいますか?」
え。
教室の後ろから女子の声がして、教室が一気にシンとする。
自分の名前が呼ばれた気がして、後ろを振り返ったのと同時に、
「うわ、また四谷?」
と大江が呆れたような声で言いながら、親指を教室の後ろの扉に向けた。
「呼ばれてる」
「……ん」
教室中の視線を感じつつ、席を立って教室を出ると、見覚えのない女子が3人、立っていた。
1人はこちらを見ずに、俯き加減。
『いいなー!イケメンは!黙ってても女の子が寄ってくるんだから!』
『まじ、今月何回目だよ』
なんて永岡と大江の声が聞こえる。
大江の言う通り、こう言うことは高校に入って何度かあったから、これから何が起こるのか予想はついている。
廊下にいる人たちの視線を感じながら、彼女たちについていくと、人気の少ない、階段の踊り場に着いた。
屋上に続くこの階段の先は、立ち入り禁止になっているため、使う人はほとんどいない。
けれど、ここに来るのは、5度目。