【短編】夏空よりも眩しいきみへ
『ずっと好きな子がいるから』
はっきりとそう言えば、俺に声をかけてくる人は今よりもうんと減るだろう。
でも、そうしないのは……。
少しでも、羽奈の視界に入っていたいから。
俺が女の子に呼び出されようが、羽奈にとってはどうでもいいことで、興味がないかもしれない。
そんなことわかっているつもりでも、1%でも可能性があるならと、抗ってしまう。
気にして欲しい、見て欲しい。
ガキみたい。いやガキだ。俺はずっと。
昔住んでいた団地の隣の公園。
そこで、羽奈と他の子たちと遊んでいたときと何も変わらない。
羽奈に一番見て欲しくて必死だった。
羽奈を一番、笑わせたかった。
羽奈の手を、ずっと離したくなかった。
その気持ちが、恋だってことに気付くのがほんのわずか、遅かっただけ。
あんな噂が流れる前に、俺の口から、伝えたかった。
あーあ。
永岡と大江が羽奈の良さに気付いていたからって。
永岡のサッカー部の先輩が、羽奈に気があるからって。
イライラしすぎ。ほんと、余裕なさすぎ。
いつもなら、当たり障りなく断るのに。
「はぁー最悪」
誰もいなくなった踊り場で、ため息混じりにつぶやいた。