【短編】夏空よりも眩しいきみへ
中学に上がったタイミングで、俺は、羽奈と一緒だった団地から引っ越してしまったので、
通学路で彼女とばったり会うことなんて、まずない。
こんなに引きずるなんて想像もしてなかった。
いつか自然と、この気持ちが薄れていくと思っていたのに。全然。
学校を出ると、一斉に蝉が鳴く声がして、日差しが照りつける。
「あっっつ……」
『ちょ、羽奈、冷たいって!』
『ヒヒッ!』
思い出す。
羽奈との懐かしい日々。
夏の暑い日、公園で思い切り遊んだ後は、親からもらった少ないお小遣いを握りしめて、近くのスーパーで1番安いソーダのアイスキャンディを買った。
羽奈はよく、隙を見て俺の頬にアイスの袋を当ててきて。
俺はよく『冷たっ!』と引っかかっていた。
そうすると、羽奈が楽しそうに笑うから。
そのあとは、どちらかの家の浴槽に氷水を張って、足を冷やして水遊びをして。
足で水をかけ合って、笑い合って。
そんな懐かしいことを思い出しながらバスを降りると、俺の足は、自然とあるところへ向かっていた。