女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
「あっ、わりい」と学生の声がすると同時によろけて転びそうになったが、後ろにいた玲人くんが支えてくれた。
「君、気をつけて」
 玲人くんが学生を注意すると、彼の眼光に怯んだ学生が「すみません」と小声で謝り、この場から逃げるようにいなくなる。
「大丈夫か?」と玲人くんに聞かれ、声を出して返事をするのも億劫でコクッと頷いた。
 自分の部屋へ行き、鍵を開けてドアを開くと、まだ隣の部屋から音楽が大音量で鳴っているのが聞こえて反射的に顔を歪めた。
 煩くて気分がますます悪くなる。家に帰ったという安心感が全くない。
「物置きじゃないよね? しかもこの騒音……」
 部屋を見て呆気に取られている玲人くんの反応はスルーして、彼の方を振り返った。
「送ってくれてありが……!」
 突然キーンと耳鳴りがして、視界がグニャリと歪んだ。
「気持ち……悪……い」
 身体の力がガクッと抜け、地面が迫ってくる。
 これはただごとじゃない。
 マズい……と思ったけれど、もう自分ではどうすることもできない。
 ああ……地面にぶつか……る。
「優里!」
 玲人くんの声が聞こえたが、そこでブチッと意識を失った。




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