女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
 祖父の言葉を聞いて、笑顔で返す。
「ありがとうございます。俺はこれで失礼します」
 軽く一礼して副医院長室を後にすると、スマホを出して優里に電話をかけた。だが、何コール鳴っても彼女は出ない。
「なにをやっている?」
 焦らずにはいられない。
 単に電話に気づいていないのか。それとも、出たくないのか。
【このメッセージ見たら電話して】
 素早くLINEを打ってスマホをポケットに突っ込むと、医局に戻って夜勤の医師と引き継ぎをし、走ってマンションに帰る。
「優里!」
 ドアを開けるが、玄関に彼女の靴はなかった。
 シーンとしている家。
 彼女がうちに住む前まではそれが当たり前だったのに、今は寂しく思う。
 いつだって俺が帰ると、彼女が笑顔で迎えてくれた。
 それがもう俺の日常になっていたんだと、今やっと気づく。
 親父に言われて出ていった?
 本当に?
 玄関を上がってリビングやキッチンを見ていくと、ダイニングテーブルの上にラップされた生姜焼きとメモが置かれていた。
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