女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
 こんな風にどんどん仕事が増えていく。
 来週新しい経理の人が来るらしいけど、もっと早く来てほしい。
 お給料の振り込みも滞ってしまわないか心配だ。
 気づけばもう夕方になっていて、なんだか途方に暮れた。
 これは私も今日は泊まりになるかもしれない。
 チラッと津田さんに目を向ければ、彼に生気がなかった。
「津田さん、帰った方がいいです。私のためにもそうしてください」
 これ以上離脱者が出ては困る。
「……うん、そうさせてもらうよ。木村さんも転職先考えた方がいいよ」
 か細い声で言って津田さんが帰っていく。
 木村さんも?
 彼が発した言葉にいささか不安を抱いたが、あまり考えないようにした。
 底なし沼にはまっていくような気がして仕事が手につかなくなると思ったのだ。現実逃避に近いかもしれない。
 気分を変えようとゼリー飲料を飲みながら仕事を続ける。
 夜になると、オフィスには私ひとりしかいなかった。
 静かになると思いきや、電話が鳴ってまた新しい仕事が増えていく。
 ああ……玲人くんのマンションに早く帰りたい。でも、彼だって今頑張ってるはず。

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