女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
自由になった手で部長の顔を思い切り引っ掻いたら、部長が「うわっ!」と呻いた。
 這いつくばって部長から離れると、自分のバッグを手に持ってオフィスを出る。
 エレベーターのボタンを連打するがすぐに来ない。
 なんでこんな時にすぐに来ないの!
「木村ちゃん、どこ行った?」
 少し怒気を帯びた部長の声がして、青ざめる。
 グズグズしてはいられない。
 非常階段を使うが、足がもつれて何度も転んだ。
「うっ⁉」
唇を噛んで悲鳴を堪えたせいで、口の中が血の味がする。
痛がってる場合じゃない。早く逃げなきゃ。
ビルから出ると、コンビニ前でしゃがみ込んだ。
大きく息を吸いながら乱れた呼吸を整えていたら、ポケットの中のスマホがブルブルと震えている。手に取ってみると、玲人くんの着信。
 ボタンを押すと、《優里、どうした?》と玲人くんの声がして涙が込み上げてきた。
「部長に……襲われそうになった」
 そばにいなくても、さっきの出来事が怖くて声が震えてしまう。
《まだ部長がそばにいるのか?》
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