女嫌いの天才脳外科医が激愛に目覚めたら~17年脈ナシだったのに、容赦なく独占されてます~
「それにしては酷いな」
 彼は私の爪が欠けた指や手首にくっきり残っている手の指の形をした痣に目をやる。
 こんな痣ができていたなんて……。
 部長に襲われそうになった時のことを思い出し、身体が震えた。
「優里? 大丈夫か?」
 彼の声がしてハッとする。
「……大丈夫。ちょっと部長のこと思い出しただけ」
 笑ってみせようとするが、顔が強張ってしまいうまく笑えなかった。
「手、痛くないの?」
「……手は別に。でも、膝が痛いかな? 階段で転んじゃって。だけど、こんなのすぐに治るから平気だよ」
 玲人くんに心配をかけないようそう言い張るが、彼は信じない。
「平気なわけないよ」
 玲人くんはそう言ってリビングのソファに私を座らせると、救急箱を持ってきた。
「手当する前に証拠として写真撮らせて。悪いようにはしない」
 彼の言葉に驚いたけれど、コクッと頷いた。
 玲人くんは手首の痣や指の爪、膝の怪我などの写真を取ると、次に優しい手つきで怪我の手当をしていく。
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