聖母のマリ子
「君がわがままを言って強引に私との結婚を決めたのはわかってるんだ。そんな君が結婚をやめたいだなんて信じられると思うのか?」
「はい?」
「君がフロリアーナに嫌がらせをしていることも聞いている。なにが聖母だ、聞いて呆れる」
この人、事実の確認もしないで噂を全部鵜呑みにしてるのか?こんなんで本当に次期国王として認められてるとか、それこそ聞いて呆れるが‥‥
「言うに事欠いて子供を愛したいだと?子供を盾に脅しをするような女が何をぬかす!笑わせるな!」
あまりにも酷い言われように、頭の中で何かが切れる音がした。だがこんな子供じみた人と同じ土俵に上がりたくない。小さく息を吐いて気持ちを鎮め、落ち着いてから話し始める。
「元の世界で私には夫と子供がいました。出産時のトラブルで多分私は一度死に、そしてここに来た。私は命がけで産んだ我が子を抱き締めることもできなかったんです。それがどれほどの未練か、あなたにわかりますか?」
想像以上に低い声が出た。怒りを抑えきれてないらしい。
「あの子に会うことが叶うなら、私は元の世界に戻りたい。本当は相手がどんな人だろうと結婚なんてしたくないし、子作りなんて虫酸が走る。また死ぬかもしれないと想像せずにはいられないから、出産は怖くてしょうがない‥‥だけど私は聖母だから、ここで生きる人達の未来のために、私は子供を産まなくてはいけないんです。聖母という肩書きしか持たない私には、他に道がない」
王太子は黙って話を聞き続けていた。でもその表情からは感情が読み取れない。
「だからせめて、一緒に親となる相手には思いやりの心を求めたかった。それがそんなにいけないことですか?あなたにも事情があるのはわかっているから、あなたではない他の誰かに代わって欲しいと言ってるんです」
途中から涙が出てると感じていたが、止めることなんてできなかった。王太子をあなた呼ばわりして不敬もいいとこだが、そんなの知ったこっちゃない。
「私はあなたとの結婚を望んだことはありません。大司教様に言われるまま、他に選択肢を与えられていないのです。王妃教育も指示されてそれに従っているだけのこと。フロリアーナ嬢の件は全くの濡れ衣です。むしろあなたとのことで嫌みを言われ、抗議されたり嫌がらせを受けているのは私の方なので、調べて頂いて結構です」
まだ時間が早かったが、席を立ってその場を辞することにした。
「ああ、それと。次に子供を産むのなら、私は今度こそその子を抱き締めてあげたい。元の世界に残してきてしまった赤ちゃんの分まで愛してあげたいと、心からそう思っています」
もうこの人の顔は見たくもない。次回からのお茶会はパスしようと決意し、その後の王妃教育もキャンセルして神殿へと戻った。
「はい?」
「君がフロリアーナに嫌がらせをしていることも聞いている。なにが聖母だ、聞いて呆れる」
この人、事実の確認もしないで噂を全部鵜呑みにしてるのか?こんなんで本当に次期国王として認められてるとか、それこそ聞いて呆れるが‥‥
「言うに事欠いて子供を愛したいだと?子供を盾に脅しをするような女が何をぬかす!笑わせるな!」
あまりにも酷い言われように、頭の中で何かが切れる音がした。だがこんな子供じみた人と同じ土俵に上がりたくない。小さく息を吐いて気持ちを鎮め、落ち着いてから話し始める。
「元の世界で私には夫と子供がいました。出産時のトラブルで多分私は一度死に、そしてここに来た。私は命がけで産んだ我が子を抱き締めることもできなかったんです。それがどれほどの未練か、あなたにわかりますか?」
想像以上に低い声が出た。怒りを抑えきれてないらしい。
「あの子に会うことが叶うなら、私は元の世界に戻りたい。本当は相手がどんな人だろうと結婚なんてしたくないし、子作りなんて虫酸が走る。また死ぬかもしれないと想像せずにはいられないから、出産は怖くてしょうがない‥‥だけど私は聖母だから、ここで生きる人達の未来のために、私は子供を産まなくてはいけないんです。聖母という肩書きしか持たない私には、他に道がない」
王太子は黙って話を聞き続けていた。でもその表情からは感情が読み取れない。
「だからせめて、一緒に親となる相手には思いやりの心を求めたかった。それがそんなにいけないことですか?あなたにも事情があるのはわかっているから、あなたではない他の誰かに代わって欲しいと言ってるんです」
途中から涙が出てると感じていたが、止めることなんてできなかった。王太子をあなた呼ばわりして不敬もいいとこだが、そんなの知ったこっちゃない。
「私はあなたとの結婚を望んだことはありません。大司教様に言われるまま、他に選択肢を与えられていないのです。王妃教育も指示されてそれに従っているだけのこと。フロリアーナ嬢の件は全くの濡れ衣です。むしろあなたとのことで嫌みを言われ、抗議されたり嫌がらせを受けているのは私の方なので、調べて頂いて結構です」
まだ時間が早かったが、席を立ってその場を辞することにした。
「ああ、それと。次に子供を産むのなら、私は今度こそその子を抱き締めてあげたい。元の世界に残してきてしまった赤ちゃんの分まで愛してあげたいと、心からそう思っています」
もうこの人の顔は見たくもない。次回からのお茶会はパスしようと決意し、その後の王妃教育もキャンセルして神殿へと戻った。