聖母のマリ子
俺が直接謝罪に向かうべきだろう。まずは先日の暴言とこれまで酷い態度をとり続けたことを詫び、直接謝罪する機会を与えて欲しいと願う内容の手紙を送った。
数日後、聖母から手紙の返事が届いた。そこには、謝罪は手紙で十分なのでその気持ちは結婚を白紙に戻すことで示して欲しいと書かれていた。
手習いを始めたばかりの幼い子が書くようなその文字は、聖母が直接したためたものなのだろう。代筆を頼むこともできただろうに、それが余計に聖母の本心を伝えているのだと実感させた。
その一方で、フロリアーナは相変わらず聖母の悪行を語り続けていた。聖母は神殿に籠っているはずなのに、どうやって嫌がらせをするというのか‥‥冷静になってみると、彼女の主張には無理があり過ぎる。この件に関しても聖母に非はないのかもしれないと思えた。
上がってきた調査報告はその疑念を裏付けるものだった。王宮で広まる噂は聖母を悪くいうものばかりで、至るところで嫌がらせを受ける聖母の様子が目撃されており、逆に聖母が横暴に振る舞う姿を直接見たものは皆無だった。
そもそも聖母は王宮内に味方となるものがおらず、フロリアーナが語った悪事を単独で働くのは無理だろう。
フロリアーナは婚約解消に納得ができず、自分が行った嫌がらせをそのまま聖母にされたと偽り、どうにかして元の鞘に収まろうと目論んだのだ。
少し調べればすぐわかることだったのに、どうして気づけなかったのか。言い訳のしようもない。自分の不甲斐なさに憤りを覚えた。
フロリアーナの件で責めたことを重ねて詫びる手紙を送ったが、聖母から返事が来ることはなかった。
最早俺にできることは、この結婚を白紙に戻すことだけなのだろう。
後日、父上に事情を話して結婚の撤回を求めたが、あえなく却下されてしまった。それどころか、むしろ婚期を早める提案を持ち出されてしまう。
最重要機密として扱われていた聖母の存在をフロリアーナが周辺に漏らしたことで、既にその噂が国内外に広がり始めているという。
神殿で囲われているのも、結婚が公に発表されていないのも、全ては聖母を守るため。確固たる地位が確立されるまで、その存在は隠されているはずだったのだ。
何故そこまで隠す必要があるのか。その理由を告げられないまま、父上との話は終了した。
数日後、聖母から手紙の返事が届いた。そこには、謝罪は手紙で十分なのでその気持ちは結婚を白紙に戻すことで示して欲しいと書かれていた。
手習いを始めたばかりの幼い子が書くようなその文字は、聖母が直接したためたものなのだろう。代筆を頼むこともできただろうに、それが余計に聖母の本心を伝えているのだと実感させた。
その一方で、フロリアーナは相変わらず聖母の悪行を語り続けていた。聖母は神殿に籠っているはずなのに、どうやって嫌がらせをするというのか‥‥冷静になってみると、彼女の主張には無理があり過ぎる。この件に関しても聖母に非はないのかもしれないと思えた。
上がってきた調査報告はその疑念を裏付けるものだった。王宮で広まる噂は聖母を悪くいうものばかりで、至るところで嫌がらせを受ける聖母の様子が目撃されており、逆に聖母が横暴に振る舞う姿を直接見たものは皆無だった。
そもそも聖母は王宮内に味方となるものがおらず、フロリアーナが語った悪事を単独で働くのは無理だろう。
フロリアーナは婚約解消に納得ができず、自分が行った嫌がらせをそのまま聖母にされたと偽り、どうにかして元の鞘に収まろうと目論んだのだ。
少し調べればすぐわかることだったのに、どうして気づけなかったのか。言い訳のしようもない。自分の不甲斐なさに憤りを覚えた。
フロリアーナの件で責めたことを重ねて詫びる手紙を送ったが、聖母から返事が来ることはなかった。
最早俺にできることは、この結婚を白紙に戻すことだけなのだろう。
後日、父上に事情を話して結婚の撤回を求めたが、あえなく却下されてしまった。それどころか、むしろ婚期を早める提案を持ち出されてしまう。
最重要機密として扱われていた聖母の存在をフロリアーナが周辺に漏らしたことで、既にその噂が国内外に広がり始めているという。
神殿で囲われているのも、結婚が公に発表されていないのも、全ては聖母を守るため。確固たる地位が確立されるまで、その存在は隠されているはずだったのだ。
何故そこまで隠す必要があるのか。その理由を告げられないまま、父上との話は終了した。