聖母のマリ子
はじめての彼氏は高1の時の部活の先輩。告白されて付き合い始め、たくさんのはじめてをその先輩と経験し、浮かれまくった私はその先輩のことが大好きになっていた。
だが数ヶ月もすると先輩は私にそっけなくなり、気づいた時には二股をかけられ、私は彼に手酷くふられることとなる。
無防備に先輩を信用しのめり込んだ結果裏切られた私は、傷つきたくなくて他人に深入りすることを恐れるようになった。
その後も何人かとお付き合いはしたが先輩の時のようにのぼせ上がることはなくなり、自分も相手も同じくらいの熱量で、振り回すこともなく振り回されることもない。それくらいが心地良かったし、丁度良かった。
先輩に傷つけられ自信を失い、自分なんかが愛されるわけがないと思い込むようになった私は、自己防衛として相手のことも愛せなくなっていたのだと思う。
妊娠が発覚して浮気を疑われた時、『ひとりで産んで育てよう』という結論に至るまでそう時間はかからなかった。雅樹君を説得することより、自身の中で成長を続ける新たな命の方が重要で、それ以外のことを考える余裕はなかったのだ。
もしあの時雅樹君が私の妊娠を喜んで受け入れてくれていたら‥‥浮気を疑われてもしょうがないあの状況で、それでも彼が私を信じてくれていたら‥‥私も彼を信じ、彼を愛することができたかもしれない。
でも現実の雅樹君は私を疑って拒絶した。結果的に私達は結婚したけど、私の中でそれがしこりとして残ってしまったんだと思う。
そのせいか、今の私は赤ちゃんのことを想うことはあっても、雅樹君のことを思い出すことはあまりない。
神殿でのお茶会の時、王太子に『騙されたと思って私を信じろ』なんて偉そうに言った私ではあるが、あれは文字通り王太子を騙したといえるだろう。
騙すといっても罠にかけようとかそういうのではなく、あれはあくまで『人として信じる』という意味だった。
それなのに、その言葉を信じた王太子がわかりやすく私に好意を示し始め‥‥私はその好意をどう受けとめるべきかがわからずに戸惑っているのだ。
こんなはずじゃなかった。王太子とのはじまりは最悪だったから、彼とは友人のような信頼が築ければそれでいいと考えていたのに、まさかこんなことになるなんて‥‥
王太子と友人以上の関係になるのは決して間違いではない。私達は夫婦になるのだからむしろ好ましいはずである。
けれど、過去の自分が警鐘を鳴らしている。
『信じて裏切られたらまた傷つく』と‥‥
だが数ヶ月もすると先輩は私にそっけなくなり、気づいた時には二股をかけられ、私は彼に手酷くふられることとなる。
無防備に先輩を信用しのめり込んだ結果裏切られた私は、傷つきたくなくて他人に深入りすることを恐れるようになった。
その後も何人かとお付き合いはしたが先輩の時のようにのぼせ上がることはなくなり、自分も相手も同じくらいの熱量で、振り回すこともなく振り回されることもない。それくらいが心地良かったし、丁度良かった。
先輩に傷つけられ自信を失い、自分なんかが愛されるわけがないと思い込むようになった私は、自己防衛として相手のことも愛せなくなっていたのだと思う。
妊娠が発覚して浮気を疑われた時、『ひとりで産んで育てよう』という結論に至るまでそう時間はかからなかった。雅樹君を説得することより、自身の中で成長を続ける新たな命の方が重要で、それ以外のことを考える余裕はなかったのだ。
もしあの時雅樹君が私の妊娠を喜んで受け入れてくれていたら‥‥浮気を疑われてもしょうがないあの状況で、それでも彼が私を信じてくれていたら‥‥私も彼を信じ、彼を愛することができたかもしれない。
でも現実の雅樹君は私を疑って拒絶した。結果的に私達は結婚したけど、私の中でそれがしこりとして残ってしまったんだと思う。
そのせいか、今の私は赤ちゃんのことを想うことはあっても、雅樹君のことを思い出すことはあまりない。
神殿でのお茶会の時、王太子に『騙されたと思って私を信じろ』なんて偉そうに言った私ではあるが、あれは文字通り王太子を騙したといえるだろう。
騙すといっても罠にかけようとかそういうのではなく、あれはあくまで『人として信じる』という意味だった。
それなのに、その言葉を信じた王太子がわかりやすく私に好意を示し始め‥‥私はその好意をどう受けとめるべきかがわからずに戸惑っているのだ。
こんなはずじゃなかった。王太子とのはじまりは最悪だったから、彼とは友人のような信頼が築ければそれでいいと考えていたのに、まさかこんなことになるなんて‥‥
王太子と友人以上の関係になるのは決して間違いではない。私達は夫婦になるのだからむしろ好ましいはずである。
けれど、過去の自分が警鐘を鳴らしている。
『信じて裏切られたらまた傷つく』と‥‥