聖母のマリ子
私が若干キレ気味な感じになったせいか、お爺さんはいそいそと部屋から出ていった。
入れ替わりに、さっきの綺麗な女の人が入ってきて、食事の準備をしてくれている。
「あの‥‥お姉さん?」
「あ‥‥失礼致しました。私は聖母様の侍女を務めます、ジュリアーナ・マリオッティと申します。ジュリアとお呼び下さい」
「あー‥‥ジュリアさん」
「ジュリアとお呼び下さい」
圧が凄いな。
「‥‥ジュリア」
「はい」
「聞いても無駄だろうけど‥‥これって夢‥‥」
「ではないです」
「だよね。うん。もし夢だとしても、夢の中で夢かって聞いても、夢だとは言われないよね」
「いえ、夢ではございません」
「わかってる。わかってるよ。じゃあ、前の世界?の私は、どうなってるの?もしかして、死んでしまった?」
「何も覚えていらっしゃらないのですか?」
「いや‥‥最後‥‥記憶が途切れてしまってるけど‥‥ちゃんと覚えてる」
そう、私は赤ちゃんを産んで、まともに抱き締めてあげることすらできずに、そのままここにきてしまったのだ。
「聖母様‥‥」
あれからどれくらい時間が経っているのかはわからない。
もしここが現実だとしたら、私はもう二度と赤ちゃんに会えないの?‥‥この時はじめてその事実に気づいた私は、あまりにショックで嘔吐した。
それから数日が経ち、ここは本当に夢の中ではないのかもしれないと思い始めていた。
水すらも受けつけず嘔吐を繰り返していた私は、日に日に衰弱していき、ずっと寝て過ごしていた。
そして目が覚める度にこの豪華な部屋に戻るのだ。ここが夢だと信じるのは、いくらなんでも無理があると感じる。
「夢だったら良かったのに‥‥」
「聖母様‥‥」
私のひとり言にジュリアが応える。彼女は私のそばで、ずっと看病を続けてくれていた。
「ていうか、聖母って何?」
「え?」
「ジュリア。聖母って呼ばれるの、嫌い。マリ子でいい」
「かしこまりました。マリコ様」
「前から思ってたんだけど、ジュリアは魔法が使えるの?」
そういえば、ここに来てから一度もトイレに行ってないしお風呂にも入っていない。どう考えてもおかしい。
「はい。マリコ様のお世話は、基本的に魔法でさせて頂いております」
「魔法って、みんな普通に使えるの?」
「得手不得手はございますが、多くの者は身の回りのことを魔法で行っております」
「私も使える?」
「一般的な魔力に関しては、マリコ様がお食事をとられるようになれば、自然と使えるようになるかと‥‥」
そうだ、私は随分長いこと、食事もとっていなかった。
入れ替わりに、さっきの綺麗な女の人が入ってきて、食事の準備をしてくれている。
「あの‥‥お姉さん?」
「あ‥‥失礼致しました。私は聖母様の侍女を務めます、ジュリアーナ・マリオッティと申します。ジュリアとお呼び下さい」
「あー‥‥ジュリアさん」
「ジュリアとお呼び下さい」
圧が凄いな。
「‥‥ジュリア」
「はい」
「聞いても無駄だろうけど‥‥これって夢‥‥」
「ではないです」
「だよね。うん。もし夢だとしても、夢の中で夢かって聞いても、夢だとは言われないよね」
「いえ、夢ではございません」
「わかってる。わかってるよ。じゃあ、前の世界?の私は、どうなってるの?もしかして、死んでしまった?」
「何も覚えていらっしゃらないのですか?」
「いや‥‥最後‥‥記憶が途切れてしまってるけど‥‥ちゃんと覚えてる」
そう、私は赤ちゃんを産んで、まともに抱き締めてあげることすらできずに、そのままここにきてしまったのだ。
「聖母様‥‥」
あれからどれくらい時間が経っているのかはわからない。
もしここが現実だとしたら、私はもう二度と赤ちゃんに会えないの?‥‥この時はじめてその事実に気づいた私は、あまりにショックで嘔吐した。
それから数日が経ち、ここは本当に夢の中ではないのかもしれないと思い始めていた。
水すらも受けつけず嘔吐を繰り返していた私は、日に日に衰弱していき、ずっと寝て過ごしていた。
そして目が覚める度にこの豪華な部屋に戻るのだ。ここが夢だと信じるのは、いくらなんでも無理があると感じる。
「夢だったら良かったのに‥‥」
「聖母様‥‥」
私のひとり言にジュリアが応える。彼女は私のそばで、ずっと看病を続けてくれていた。
「ていうか、聖母って何?」
「え?」
「ジュリア。聖母って呼ばれるの、嫌い。マリ子でいい」
「かしこまりました。マリコ様」
「前から思ってたんだけど、ジュリアは魔法が使えるの?」
そういえば、ここに来てから一度もトイレに行ってないしお風呂にも入っていない。どう考えてもおかしい。
「はい。マリコ様のお世話は、基本的に魔法でさせて頂いております」
「魔法って、みんな普通に使えるの?」
「得手不得手はございますが、多くの者は身の回りのことを魔法で行っております」
「私も使える?」
「一般的な魔力に関しては、マリコ様がお食事をとられるようになれば、自然と使えるようになるかと‥‥」
そうだ、私は随分長いこと、食事もとっていなかった。