聖母のマリ子

原因の究明

「マリコ様、お目覚めですか?」

 目が覚めた時、そこにエドの姿はなく、ジュリアがそばに待機していた。

 動けないと思っていた体は既に回復しているようだが、とにかくだるい。昨夜は本当に酷いめにあった。

「回復魔法をかけてありますが、お体の調子はいかがですか?」

「ああ、魔法で回復してくれてたんだ。ありがとう。ちょっとだるいけど体は平気そうだよ」

「また魔力が減っているようです。おそらく昨夜魔力が放出されたのかと‥‥ポーションで回復した方がいいかもしれませんね」

 ジュリアがポーションを用意してくれてそれを一口飲む。

「うん、少し楽になった。でもなんで急にこんなことになっちゃってるんだろうね?」

「とりあえず、ペニーさんに食事を用意してもらうのでそれを食べましょうか。ポーションも時間を置いてもう一口飲んだ方が良さそうですね。その間に大司教様に来て頂けるよう手配致しますので、原因を探ってもらえば、何かわかるかもしれません」

 そういえば、私は結婚をして住まいが神殿から王宮に変わったんだった。

 神殿でお世話になった人達にお礼すら言えてないけど、ご近所だしその機会はこれからいくらでもあるだろう。

 それにしても、王宮の食事が凄く美味しい。

「マリコ様には王宮の食事では魔力量が足らないかもしれませんね?ペニーさんに言って食事の内容を少し変えてもらいましょう」

「え?これ、凄く美味しいよ?私はこのままで十分満足だよ?」

「食材もそうですが調理法によって魔力量が更に減ってしまうので、マリコ様のように消費が激しい場合、この食事では魔力不足なんです」

「そんなあ‥‥魔力はポーションで補給すれば良くない?」

「ポーションで全ての魔力を補おうとすれば許容量を越えて中毒を起こしてしまいます。極力食事で回復させて摂取量を減らさなければ、中毒症状で最悪死ぬこともありえます」

 美味しいものも食べられない‥‥そんな世の中なんて‥‥ポイズン過ぎて泣いてしまいそうだ。

 もう最後かもしれない美味しい食事を終えるとペニーが身仕度を整えてくれて、その後いいタイミングで大司教がやって来た。

「マリコ様、今日は以前お話した桃の属性について研究している神官を連れて参りました」

「はじめてお目にかかります。ジャン・アマートと申します。どうぞよしなに」

 ジャンさんは40代中頃の白衣が似合いそうなおじ様だ。私の未来は彼の研究にかかっている。眼鏡をかけて賢そうだし、きっと任せて安心なはずだ。
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