聖母のマリ子
「‥‥殿下、続きは夜にお願い致します」

 エドの暴走を止めてくれたのは、安定の側近ジェラルドである。

「すまない‥‥私の愛しいマリコが他の男と見つめ合っていたから、つい我を忘れてしまった」

「ごめんなさい‥‥でも誤解なの。私の魔力のことで話を聞いていて、つい盛り上がってしまっただけなの」

 闇落ちされると困るので必死に誤解をとこうと弁解していたら、空気を読めないジャンさんが口を挟んできた。

「あの‥‥」

 ちょっとジャンさん!?今は黙っててくれないかな!?殺されたいの!?

「魔力放出の原因がわかったかもしれません」

 ‥‥‥‥ん?

「多分‥‥発情ですね」

 ‥‥‥‥はい?

「ちょっと待ってくれ。魔力の放出とは一体なんのことだ?」

 そういえばエドは私の魔力のこと知らないんだった‥‥段々収拾がつかなくなってきて、もうどうしたらいいのかわからない。

 あとは頼んだ!という意味を込めて大司教に視線を送る。

「殿下、実は昨日マリコ様に魔力の放出が認められまして、みなでその対策を話し合っておりました。緊急を要するため報告が遅れましたこと、心よりお詫び申し上げます」

 うわー‥‥魔力の放出は半年前からわかってたのに‥‥この爺さん、平気な顔して嘘つくわー。

「緊急を要することだからこそ、夫である私にまず報告すべきではないのか?それに『桃の属性』についても話していたのだろう?それについての報告はしないつもりか?」

「‥‥それに関しましては、時期尚早にございます。殿下には折をみてご報告致しますので、今しばらくお待ち下さい」

「‥‥‥‥‥‥わかった、今はいい。では、魔力放出の原因が発情とは、どういう意味だ?」

 エドと大司教がにらみ合い一触即発といった雰囲気だったがとりあえずエドが折れ、話がようやくジャンさんのびっくり発言まで戻った。

「あー‥‥説明します」

 ジャンさんが一歩前に出て自身の予測に基づいた魔力放出の原因を語り始めた。

「先程、殿下がマリコ様の手に口づけをされた際、一瞬魔力が多量に放出されました。その後口づけが激しさを増し、おそらくマリコ様は動揺なされたのでしょう。放出は一旦おさまりを見せそのまま落ち着くかと思われましたが、再び放出が始まり徐々にその量が増えていきました。察するに、マリコ様がご気分を高揚させたことにより魔力の放出が起こったものと推測できるかと思われます」

 何これ‥‥死体撃ちってやつですか?
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