聖母のマリ子
「先日行われた統計調査も実に興味深い結果が出ました。マリコ様も結果は聞きましたか?」

「あー大司教様が結婚数と出産数が激増したって喜んでたね」

「そうです。あれも単純な見方をすれば、マリコ様と殿下が結婚式後のパレードで過剰な接触をしたことが噂となり、大々的に報道され、王国全土に知れ渡り、国民の多くがそれを好意的に受け取った結果と言えますよね?」

 過剰な接触って‥‥ジャンさんのオブラートの包み方が独特過ぎる。

「ですがひねくれた見方をすると‥‥殿下との口づけで発情したマリコ様が発した魔力に何らかの効力があり、その作用でその場にいた人々がおふたりの過剰な接触を好意的に捉えた‥‥という可能性が考えられます。他に考えられる作用として、マリコ様の魔力によって発情が促された可能性もありますよね?まあこれはかなり範囲が限定的なので現実的ではありませんが‥‥」

 ジャンさん‥‥凄く賢いし、いい人なんだけどねえ‥‥彼の話はとても面白いのだが、この口の悪さでエドに嫌われている。そのせいで彼と会う許可は非常に出にくい。

「あ!そうそう。僕、この前どうしてマリコ様は妊娠しないのかなってふと思ったんです。それで考えてみたんですけど‥‥殿下の精を魔力に変えてるから本来の機能を失っている可能性があるのかなと‥‥まあこれも仮定の話なので、穴はありまくりですけどね?その場合必要量以上の精が注がれれば妊娠しそうですし、殿下は常に必要量を越えてますもんね?」

「でもその仮定は結構あり得るかもね?試してみる価値がありそう‥‥いや、でも発情しないで子作り‥‥さりげなく難しいな。てか、無理じゃない?」

「うーん‥‥確かに。あ!マリコ様を昏睡状態にして殿下に精を注いでもらえばいいんじゃないですか?」

「あ‥‥こんな時こそ、器具を使って精を注入すればいいのか‥‥」

「器具‥‥とは?」

「スポイトとか、この世界にもあるでしょ?」

「なるほど!確かに!昏睡よりいいですね!」

 以前エドにドン引きされた『器具を使って注入』案は、これ以上ない最高の手段として採用が決定した。

 その日の夜、私は早速エドにそのことを報告したのだが、当然の結果でドン引きされた‥‥

 それでも『エドは私との赤ちゃんが欲しくないの?』と目を潤ませてお願いした結果、一回だけならと承諾をもらい‥‥私は見事、その一回だけのチャンスをものにした。

 やはり私は妊娠しやすい体質だったらしい。
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