聖母のマリ子
回復
ここでジュリアにお世話されている限り、私は死ぬことすらできないことに気づいた。
食事をとらなかったせいで衰弱したということは、そこまで強い魔力ではないのかもしれないけれど、少なくとも生命を維持させる最低限の治療はなされていたようだ。
最後の記憶を辿る限り、私は死んでしまった可能性がかなり高いと思われる。だとしたら、どう足掻いたとしても日本に戻ることはできないだろう。
残してきた家族‥‥両親や雅樹君、何よりも生まれたばかりの赤ちゃんのことを思うと、心臓を鷲掴みにされたような痛みに襲われる。
なんで日本での記憶を持ったままこの世界に来なければならなかったのか。どうせ転生させるなら、記憶を消してくれたら良かったのに‥‥
誰の仕業か知らないけれど、こんなの酷過ぎる。どう考えても私にメリットがないと感じるのだが、多分勘違いではないと思う。
とにかく、戻ることもできず死ぬことも許されないのなら、寝てばかりいてもしょうがないという結論に至った。
どうして私が聖母に選ばれたのかはわからないし、私に何かできるとも思えない。無理なものは無理なのだ。
お世話になってるし協力はするけど、あくまでできる範囲に限らせてもらおう。
そう決意して、私はとりあえず体調を回復させる努力を始めることにした。
「私がここに来て、どれくらい経ってるの?」
「そろそろひと月になります」
「え!?」
「マリコ様は降臨された後、半月以上お目覚めになりませんでしたので。この部屋で目覚められてからは既に10日経っております」
「私、ひと月何も食べてないのに、なんで平気なの?」
「平気ではございません。お鏡をご覧になりますか?」
ジュリアに渡された手鏡を覗いて、自分の変わりように驚愕した。そこには、職場で意識を失った時以上に痩せこけた自分の顔が映っていたのだ。
「これは‥‥酷いね。どうしてこれで生きているのか不思議だね。うん。何か食べた方がいいかもしれない」
「はい。すぐに用意してまいります」
ジュリアが嬉しそうに微笑んだことに気づいた。彼女は痩せこけていく私の顔を毎日見ていたのだ。きっと心配してくれていたのだろう。
彼女は感情の起伏がほとんどなくて少し怖いと感じていたけど、意外と優しくていい人なのかもしれない。
その後、ジュリアが用意してくれたスープを少しだけ口にする。吐き気を感じるが、ここを乗り越えないと体調を戻すことはできない。かなりきついが、しばらくの我慢だ。
食事をとらなかったせいで衰弱したということは、そこまで強い魔力ではないのかもしれないけれど、少なくとも生命を維持させる最低限の治療はなされていたようだ。
最後の記憶を辿る限り、私は死んでしまった可能性がかなり高いと思われる。だとしたら、どう足掻いたとしても日本に戻ることはできないだろう。
残してきた家族‥‥両親や雅樹君、何よりも生まれたばかりの赤ちゃんのことを思うと、心臓を鷲掴みにされたような痛みに襲われる。
なんで日本での記憶を持ったままこの世界に来なければならなかったのか。どうせ転生させるなら、記憶を消してくれたら良かったのに‥‥
誰の仕業か知らないけれど、こんなの酷過ぎる。どう考えても私にメリットがないと感じるのだが、多分勘違いではないと思う。
とにかく、戻ることもできず死ぬことも許されないのなら、寝てばかりいてもしょうがないという結論に至った。
どうして私が聖母に選ばれたのかはわからないし、私に何かできるとも思えない。無理なものは無理なのだ。
お世話になってるし協力はするけど、あくまでできる範囲に限らせてもらおう。
そう決意して、私はとりあえず体調を回復させる努力を始めることにした。
「私がここに来て、どれくらい経ってるの?」
「そろそろひと月になります」
「え!?」
「マリコ様は降臨された後、半月以上お目覚めになりませんでしたので。この部屋で目覚められてからは既に10日経っております」
「私、ひと月何も食べてないのに、なんで平気なの?」
「平気ではございません。お鏡をご覧になりますか?」
ジュリアに渡された手鏡を覗いて、自分の変わりように驚愕した。そこには、職場で意識を失った時以上に痩せこけた自分の顔が映っていたのだ。
「これは‥‥酷いね。どうしてこれで生きているのか不思議だね。うん。何か食べた方がいいかもしれない」
「はい。すぐに用意してまいります」
ジュリアが嬉しそうに微笑んだことに気づいた。彼女は痩せこけていく私の顔を毎日見ていたのだ。きっと心配してくれていたのだろう。
彼女は感情の起伏がほとんどなくて少し怖いと感じていたけど、意外と優しくていい人なのかもしれない。
その後、ジュリアが用意してくれたスープを少しだけ口にする。吐き気を感じるが、ここを乗り越えないと体調を戻すことはできない。かなりきついが、しばらくの我慢だ。