ひとたらしどうし
「……ほっぺただけじゃなくて…、」


迂闊に、滑ったコトバ。


やばい。自分でも無意識過ぎるコトバを、てのひらで口を塞いで押し込めた。


「ん?ほっぺただけじゃなくて、どした?」


叶夢さんこそ、わかっていてわざとなのか、それとも本当にわからないのか。


いまいち、判断がつかなくて。


叶夢さんの顔が見られなくて、前を向いたままの私に。


「どした、柚ちゃん。ほら、こっち向いてごらんなさいな」


その口調でもう、わかっていてわざとなのだと、思い知る。



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