ひとたらしどうし
ふふ。


これじゃあ、いくら時間があっても足りなくなっちゃうから、ほんとにもう、行こう。


私を離した叶夢さんは、やっとギアをパーキングからドライブに入れた。


ゆるり、と、動いた車のなかで、いろんな話をする。


叶夢さんは、学生時代バスケットをしていたこととか。


甘いものが好きで、今日、私といっしょにカフェでお茶をしたいと思ってくれていること。


仕事中でも私のことを考えて、私が今、なにをしているのか、気になって仕方がないこと。


「おんなじ工場内にいるのに、会えないのはもう、生殺し、だよね」


そんな叶夢さんのコトバ、に。


「な、生殺し…ッ?!そんなに?!」


「そうだよー、ほんとは一分1秒でも離したくないんだよ?」


そんなの当たり前じゃん。


言い切ってくれた叶夢さんを、まぶしく見つめた。





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