ひとたらしどうし
「じゃあ、今度は右耳」


ほら。


私の顎に手を当てて、叶夢さんの方へ顔を捻られる。


身を乗り出して、左耳と同じようにピアスを着けてくれる。


顔と顔が、近い。


「ほら、完璧」


その距離感のまま、私にささやく。


さすがにここじゃ、キスできない。


「…叶夢さん…、早く、出ましょう」


やっとのことで、コトバを紡げば。


「ふふ。わかった。キスしたいんでしょ」


私にだけ、聞こえる声で。


…あぁ、ズルい…


素直にうなずくことしか出来ない、私に。


「オレも、だよ?たくさんしてあげる」


お互いに、感情を素直にさらしあえば、素敵な時間が待っているのだ。


叶夢さんと私。


ふたりのあいだには、素直な感情しかない。


それで、いい。











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