ひとたらしどうし
「……やめないで、って、どうしろ、と……」



戸惑っているような、せつないような。



そんな叶夢さんの表情から、目が離せない。



「…叶夢、さん…ふたりきり、です、ね」



「…うん」



ずぶ濡れのまま、お互いに外せない視線。



その意味に、とっくに気がついている。



叶夢さんの腕に触れる、私のてのひらの熱、と。


私のくちびるに触れる、叶夢さんの親指の熱、は。


おなじ温度、だ。






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