ひとたらしどうし
まだ、顔を覆ったてのひらを、外せない私。


「柚ちゃん、ハナウタ歌ってたでしょ。前に好きだって言ってた曲だよね?」


隣で叶夢さんも、同じ曲を口ずさんでいる。


思いきって、目を開けたら、隣の叶夢さんはバスタブの縁に両手をかけて、私のほうを見ていた。


淡い湯気と、バスルームの照明に照らされて、両肩がふんわり光っている。


適度に筋肉がついている、肩や腕に、見とれる。


「…恥ずかしい…」


思わずつぶやいて、自分の両肩を両腕で抱いた。



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