涙を流さない彼が好きでした。
集合時間10分前に二人とも揃ってしまった事は、今でもよく覚えている。
二人で笑いあったよね。

「どこ行く?」って話になって、

私は咄嗟に「映画見に行きたい!」と言った。

すると優は、なぜか少し戸惑っていた。

恋愛映画で気まずくなるのが嫌なのかな、と思ったので、
「恋愛映画じゃないから大丈夫だよ、」
と言った。

そう言っても納得しない顔をしていた優は、
とうとう何も言わなくなってしまったので、
手を引っ張って、無理やり映画館に
連れて行ってしまった。

見た作品は結局『青春映画』。
同世代の男女が繰り広げる青春ストーリーだ。
結末的には、ちらしに『超号泣』って書いてあるほどの感動映画だ。

映画を見終わったあと、映画館内は涙を啜る音が響いた。私も優も泣いていた。

でも優はそれ以上に少し様子がおかしかった。
泣いていたことについては不審に思わなかったが、どうにも様子がおかしい。

少し恋愛要素が入っていたことについては
誤った、けどそれどころではない。

優の肩はすごく震えていて、呼吸も荒い。

やばい、って思ったので、声をかけてみる。

すると優は「大丈夫。ごめんね琴莉。」
と言った。

この会話が、優と話す最期の機会だった__。

その後誰かが呼んだ救急車によって近くの病院に運ばれた。

連絡が入ったのは運ばれてから1時間後、

『優が息を引き取った。』という連絡だった。

< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop