偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~

「見るにしても真剣過ぎないか」

 確かに、いくら伸縮性がある素材とはいえ、ボクサーパンツがはち切れそうな熱量には自分でも思うところがある。

 だが、さすがにこうもマジマジと見られると反応に困る。

「すみませんっ!」

 りとが目をギュッと瞑って顔を背ける。

「ほら」

 キャップを開けてペットボトルを差し出すと、彼女は顔を背けたまま手を伸ばした。

「ありがとうござ――」

 掴む直前でペットボトルをひょいと上にあげると、ようやくりとが俺を見た。

「飲ませてやろうか」

「え?」

 ベッドに膝をつき、彼女のすぐ目の前に顔を寄せる。

「口移しで」

 秒で口を手で押さえられた。

 反応を見るに、したことがないのだろう。

 かく言う俺も、ないが。

 ククッと喉を鳴らして、ペットボトルを彼女の手に持たせる。

 受け取ったりとは、俺に背を向けてそれを飲んだ。

 半分ほど飲んだのを見て、背後からペットボトルを抜き取ると、残りを飲み干した。

 そして、ペットボトルを放る。

 カランと音を立てて転がったペットボトルを目で追うりと。

「りと……」

 もう、限界だった。

 余すところなく、彼女の身体に触れ、口づけた。

 聞き慣れた女の蜜声も、いつもと違って俺を興奮させる。

 十分に潤った場所に己を押し当て、彼女の顔を見た。

 瞳一杯に涙を溜めて、その涙は瞬きのたびにこめかみへとこぼれ伝う。

 俺は、目尻の涙をすくい舐めた。

「大丈夫か?」

 彼女の両手が、俺の背中に回された。

「だいじょ……ぶ」

 大丈夫じゃないのは俺の方だ。

 今すぐ、容赦なく最奥まで貫きたい。

 だが、痛い思いはさせたくない。

 俺は歯を食いしばり、ふぅっと肩で息を吐いた。

「悪いな。いつもはこうじゃ――」

「――え?」

「いや。そのうち慣れる」

「そのうち……って?」

「え?」

 りとが顔の横の俺の腕に頬擦りをした。

 涙を流し、顔を火照らせて。

 限界だ。

 もう、一瞬もじっとしていたくない。

「慣れるまで抱くって意味だ」



 慣れても、抱くけど。



 俺は、食らいつくように彼女の唇に自分の唇を重ねた。

 と同時に、腰に力を入れる。

「ふ……っん!」

 片肘で身体を支え、反対の手で彼女の胸を包み、意識が分散されるようにと、揉みしだいた。

 狭いのにきつく締め付け、なのに柔らかくうねる。

 抗えという方が無理だ。

「う……っぐ」

 りとが息を詰めたのがわかり、唇を解放した。

「大丈夫か?」

 頬にキスをしながら聞く。

「おっき……すぎじゃ――」

 はぁはぁと喘ぎながら、りとが呟く。
「――りとのせいだ」

「へ……?」

「やめたいか?」

 やめる気なんてないのに、聞いた。

 子供染みているとわかっているが、彼女の口から聞きたかった。

 やめないで、と。



 他の女なら、萎えそうな台詞なのに……。



「やめないって言った……」
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