偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~

 涙で瞳が何色もの光を乱反射させている。

「言ったな」

「やめてって言ったら、やめるの?」

「やめたくはないけどな」

 俺が言ってどうする。

 やはり、りとは他の女とは違う。

 一筋縄じゃいかない。

「ね、りひ――」

「――やめないけどな」

 じゃあ聞くなよ、と俺がりとの立場なら思う。言う。

 ひどい男だ。

 俺は結局、彼女の答えを待たずに腰を突き上げた。

「あ――っ! ぐっ……」

 りとが喉を鳴らし、顎を上げる。

 俺はその喉元に噛みついた。

 実際には、吸い付いた。

 ぐりぐりっと下生え同士が擦れて絡まる。

 それくらい奥まで侵入し、腰を引いた。

「はぁ……っん!」

 抜けない程度に引き、また突き上げる。

「んぁ――!」

 苦しそうなりとの声。

 それすら、興奮する。

 演技なんかじゃない。

 快感か苦痛か。

 いずれにしても、俺が与えたものだ。

「りと……」

 痛いくらいきつかったのが、甘く痺れを感じる程度の締め付けに変わっていく。

 気持ちいい。

 思わず声が漏れるほどに。

「り……と」

「やっ……ぁん。ま――て……」

 ギシッギシッとスプリングが唸りだす。

 りとが一層強く俺を抱き、嬉しい反面動きにくい。

 俺は彼女の腰を掴むと、抱き起した。

「うひゃ――」

 りとは俺に跨る格好になり、落ちるのではと首にしがみついた。

 だが、すぐにそうされた意味がわかったのだろう。

 腕を緩め、俺と視線を交える。

「やめたくなくなったか?」

 俺の問いに、りとが少し間をおいてふっと笑った。

「やめたいなんて言ってないじゃない」

 汗と涙でベトベトの顔を、同じく汗でベタベタの手で拭う。

「言おうとしただろ?」

「してないわ」

「……」

「あなたは気持ちいい? って聞こうとしたの」

「……」

 りとの前だと、俺らしからぬ言動が多い。



 本当に、調子が狂う……。



「優秀な秘書は、場の空気と相手の表情を読めるんだろ?」

 負け惜しみとわかって言う。

 ついでに、ゆらゆらと腰を揺らす。

「こんなに誤魔化しようもなく、わかりやすく体現しているのに、聞くか?」

「……」

 りとが下唇を噛む。

 親指でそれを阻止すると、チュッと軽く口づけた。

「言葉が欲しい時もあるよな?」

 口角を上げて、自分でも不遜だと自覚のある笑みを浮かべると、りとがフイッと顔を背けた。

 が、俺は彼女の顎を掴んで、それを阻止する。

「気持ち良すぎて、たまんねぇよ」

 顎を掴んだままゆっくりと顔を近づける。

 りとが、はっと小さく息を呑んだ。

 そして、唇を開く。

「で? お前は?」

「え……?」

「やめたいか?」

 ギュッと締め付けられ、今度は俺が息を吐いた。

「やめないで」

 りとの腕が俺を引き寄せた。

 唇が重なり、彼女の腰が揺れる。

 互いの舌を絡めながら、絶妙なリズムで腰を揺らし合えば、すぐに我慢の限界に達した。

「理人っ――!」

 昇りつめるりとの悲鳴のような声と、搾り取られるような吸い付き具合に、俺はあっけなく降参してしまった。 
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