偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~
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私の男運の悪さは、私自身の問題かもしれない。
登さんと離婚した時、そう思った。
登さんも含めて三人の恋人は、みんな粘着質で、私がいなければ家中を探し回る力登とさほど変わらない。
世話焼きは性分だ。
だが、きっと度を越えているのだろう。
だから、付き合い始めた時はそうでもなかった恋人たちの甘え具合と言うか執着具合がエスカレートしてしまった。
まるで母親だ。
それでも、頼られていると思えば嬉しかった。
別れを切り出した時に、自殺をほのめかすような男もいたけれど、結局はそんな度胸もなく。
泣いて喚いて縋られて、脅されたりなんかもしたけれど、職場も住まいも変えてしまえばそれっきりだった。
登さんは、私が妊娠するまではそんな兆しを見せなかった。
男が働き、女が家を守る。
そんな古風な考えを持ってはいたけれど、結婚したら早く子供が欲しかった私は、躊躇うことなく仕事を辞めた。
だが、結果は散々だった。
もう、結婚なんかしない。
離婚した時にそう思った。
けれど、室――理人の言葉でハッとした。
『次にセックスする相手は、力登の父親候補?』
考えてもいなかった。
だから、考えさせられた。
私はこの先、力登に全てを捧げて生きていくのだろうか――?
それでいいと、思う。
私の大事な、たった一つの宝物。
私の生きる意味。
私の唯一の家族。
なのに、彼の言葉が頭から離れない。
再婚はしない。
じゃあ、私はもう二度と誰ともセックスしないの?
それも仕方がないのかもしれない。
別に、以前からそんなに性欲は強くない。
それに、小さな子供を抱えた母親が考えるようなことじゃない。
そう思うのに、理人の言葉はいつも心を揺さぶる。
視線も、表情も、触れる手の温かさも。
だからって、自分でも大胆なことをしたと思う。
私は基本、真面目な人間だ。
きっと、真面目過ぎるほど。
だから、恋人でない男性とのセックスは初めてで、正直後悔するのではと思った。
けれど、杞憂だった。
楽しませる自信があるなんて言うだけあって、今までのセックスがウォーミングアップだったのではと思うほどだった。
それくらい、違った。
あんなに、尽くされたのは初めてだ。
今も。
「ん……」
「りと、唇を噛むな。声、出せ」
そう言われても、やはり恥ずかしい。
理人の指が唇に触れ、痛みが遠のく。
唇についた歯形に彼の舌が這う。
「は……ぁ」
「痛いか?」
首を振ると、彼が少しホッとしたように笑った。
「じゃあ、悦い?」
どうしてこうも、言わせたがるのか。
わかっているだろうに。
「なんで――っ」
聞くの? と聞きたかったのに、奥まで突き上げられて言葉に詰まる。
理人に圧迫されて、つま先まで甘く痺れる。
「――誰にも言ったことがなさそうだから」
「……?」
意味がわからない。
確かに、気持ちいいかを言葉にしたことはない。
聞かれたこともないし。
聞かれても、恥ずかしくて言えない。
「ま、いいか」