復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「そっかー。それでどうだったの? 閣下とのデートは」

「デートだなんて」

 笑いながら、確かにまるでデートだったなと思う。

 護衛のマロが近くにがいると大公から教えてもらったが、いつの間にかすっかり忘れていた。

 忘れるほど楽しかったから。

「花火すごかったよねー」

 かつてないほど豪華だったと興奮するネージュの話を聞きながら、ルルは自分は幸せだとしみじみ思う。

 カンタンの邸で目を覚ましたときは絶望の縁にいた。。

 自分が何者かもわからず、不安と恐怖でうずくまっていた日々。状況がわかってくるほど疑問ばかりが増えた。

 帝都の行方不明者に自分は該当しないのはなぜか。

 どうして誰も捜してくれないのか。

 誰にも愛されていない、孤独な人生を歩んできたのだと、つきつけられてたようで、生きる希望を失いかけていたのである。

 それでもカンタンや夫人の温かい愛情に触れて、少しずつ顔を上げた。

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