復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
『ここ大公領には、本当にいろんな人がいるの。食うに困って犯罪者になってしまった者や、体が不自由で働き場所がなかった人とか。みんな過去を乗り越えて一生懸命生きているのよ』

 それから、城で働いてみたらと話をもらって。

 ネージュをはじめ、皆が本当に優しくて、ルルは生きる勇気をもらった。

 何者かもわからないのに……。

「じゃあ、今日からまた張り切って働こう」

「はい!」

 本当に幸せだと思う。

 とはいえ、もう十分だ。

(恋ができるまで、元気になれたんだもの)

 誰にも知られずに、この火を消せばいい。

 ルルはそっと胸もとに手をあてた。

 ひやりと冷たい石に触れる。

 今、ルルの胸もとには、大公が買ってくれたアメジストのネックレスがある。

 これから先の人生で、忘れられない想い出になるだろう。



 扉の前で大きく息を吸い、ノックをして中に入る。

 大公はすでに起きていて、寝間着のまま窓辺に立ち、外を見ていた。

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