復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 振り返った大公に「おはようございます」と声をかける。

「おはよう」

 彼は席に着くと「コーヒーを先に淹れてくれるか」という。

「はい」

 みずみずしく赤いトマトに葉物野菜。カリカリに焼いたベーコンに卵焼き。

 とれたて野菜もベーコンも、いつものようにおいしそうなのに、今朝の大公は皿に並んだ料理に手が伸びないようだ。

 食べるより先に、ルルが差し出したコーヒーカップに手を伸ばす。

「よく眠れなかったのですか?」

「ん?」

 洗いたての髪が額に落ちているのは同じだが、なんとなく疲れが取れていないように見える。

 肩が落ちているようだし、表情も暗い。

「ああ、ちょっとな。遅くまで仕事をしていたんだ」

 夕べ秘書のピエールが帝都から帰ったきた。

 昨日の昼の感じでは、執務室の書類の山がかなり減っていたはずだが、別の仕事が増えたのだろうかと心配になる。

「なにか私に手伝えそうなら、仰ってくださいね」

「ありがとう。そのときは頼むよ」

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