復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 うれしそうな大公の笑顔に、また胸がキュンと疼く。

「ありがとうございます。閣下は、褒め上手ですね」

 大公はなにかにつけ褒めてくれる。

『ルルは器用だな』

『古代語までできるなんてルルは凄いな』

 よく気が利くし、センスがいいしと、専属侍女になってまだ日が浅いのに、すでにたくさん褒められた。

 気を遣ってくれているのだ。

「褒め上手なんてはじめて言われたぞ。俺は思ったまま言ってるだけだ」

 大公は笑うが、困ったものだと思う。

 褒められるから、ついうれしくなってしまうし、そのたびに胸がときめいてキュンと疼くのだ。

 褒め上手なだけじゃない。

 祭りに一緒に行って、彼の気遣いに何度も感動した。

 人混みを歩くときは、さりげなく体を寄せて誰にもぶつからないようにしてくれたり、店の前でふと目を留めると『入ってみるか?』と聞いてくれたり。

 居酒屋なんて、ひとりだったら絶対に入れなかったから。

(楽しかったな)

 時間が止まってほしいくらいに――。

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