復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 痛みより、動揺のほうが強い。まるで心臓が直結したみたいに鼓動まで高鳴って、しまいには頬まで熱くなってくる。

 すぐ隣に座っている大公に熱が伝わってしまいそう。

「ルル、お前の指は本当に細いな」

 言われて見てみればルルの指の太さは大公の指と比べると、まるで子どものように細い。

「でも、女性はこんなものですよ?」

「柔らかくて、うづかり潰してしまいそうだそ?」

 思わず笑った。

「潰しちゃ嫌ですよ?」

 大公の手は、剣を握る強くて無骨な手だ。

「閣下の手は力強いですね。とっても安心できる素敵な手です」

 あははと大公は笑う。

「ものは言いようだな。豆だらけのゴツゴツした手でいいんだぞ」

 少しひねたように軽く睨んでくる彼は、ちょっとだけ子どもっぽく見えた。

「でも、力強いのは本当です」

「そうか。でも刺繍はできない」

「それはまぁ……」

 この大きな手で、ちまちまと刺繍をする姿を想像したら、笑いがこみ上げた。

「あ、今、想像しただろ」

「だって」

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