復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 使用人たちも気を使っているようで、誰も起こしにこない。凱旋のバカ騒ぎも落ち着き、城内はひっそりと静まり返っていた。

 ひとしきり城下を眺めたところで水を飲み、そろそろ執事を呼ぼうと思ったところだった。

 静かに扉が開く音がして、執事のカンタンが顔を出す。

「お目覚めでしたか」

 片方だけのメガネをかけたカンタンは齢四十になり、茶褐色の髪にはいくらか白いものが混じり始めた。

「今日は天気がいいな」

 アレクサンドが城に戻ってから曇り空が続いていた。

「ええ、久々に雲のない空ですね。長い雨が続きましたが、ようやく落ち着いたようです」

 窓際に向かったカンタンは、いくつか窓を開けていく。

 そのたびに、爽やかで気持ちのいい風がレースのカーテンを揺らす。

「風呂の用意ができております。食事の用意はこちらでよろしいでしょうか?」

「ああ、ここでいい」

 カンタンは密かに感嘆の溜め息を吐く。

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