復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「陛下とも話をしていたんです。閣下が戦争を終えてルイーズが二十歳を過ぎて、ちょうどいい時期に。ですが――。そうはいかなくなりました」

 皇室での舞踏会で、ルイーズがある男に庭園で襲われ、助けたのはディートリヒだった。

 男は落ちぶれた貴族の男で、ディートリヒがその場で切り捨てたという。

「ルイーズとの婚約を強く願ったのは、当時の皇太子ディートリヒ殿下でした」

「断れなかったわけか」

「はい。今思えばあの事件も仕組まれていたのかもしれません。事件で死んだ男の実家はその後男の弟が継ぎましたが、あったはずの借金がいつの間にか消えていたのです」

 公爵は悔しそうに眉をひそめる。

「ルイーズが皇宮に入ってからは、ふたりきりでは会わせてもらえませんでした。必ず見張りのように侍女長がいたのです」

 それから先は声を震わせた。

 ルイーズはいつも不安そうな表情をしていたという。

「これを」

 公爵はポケットから結んだ紙を取り出し、開いてアレクサンドに見せた。

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