復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「姑息で悪賢いとは思っていたが、まさかそこまで悪人とはな。血を分けた弟とはいえ」

 絶対に許さないと心で続ける。

 口にして、これ以上ゴーティエ公爵を巻き込みたくなかった。

「陛下もなんだかんだ言いつつ、ディートリヒ殿下をかわいがっていらっしゃった。閣下がどうしても帝位を嫌がるなら、皇太子を閣下が支えてくれるのもいい形かもしれないと仰っていたんです」

 だか、きっと無理だっただろう。

「俺に注目が集まれば、あいつは必ず俺の命を狙う。ディートリヒは自分だけが頂点にいる世界しか受け入れられないんだ」

 皇帝となった今もそうだ。

 取り巻きをはべらせ、気に入らない貴族には理由をこじつけて増税を課す。最近は自分を神聖化するために神殿に取り入っているという。

 ディートリヒの考える絶対的君主は、どこまでも張りぼてだ。中身がない。

 アレクサンドは背もたれに体を預け、右手でこめかみを掴んだ。

(このままにはしておけない)



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