復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 コンコンとドアがノックされ、アレクサンドはハッとして扉を振り向いた。

「失礼いたします」

 ペコリと頭を下げたのはルルだ。

 ワインの追加と軽食を乗せたカートを押して入ってくる。

 今日はもう休むよう言ったのに、と思う反面ちょうどよかった。

 刺繍の話をまだしていないが、公爵とルルが顔を合わせれば、なにかがわかるかもしれない。

 公爵は宮殿にいるルイーズを疑っている。

 ルルがルイーズである可能性は、まだゼロじゃない。

 公爵を見ると、公爵はチラリとルルを見た後、ピクリと眉を歪めた。

 そのままジッとルルを見つめている。

「ルル。これが済んだら、今度こそもう休んでいいぞ」

「はい。わかりました」

 料理をテーブルに置き、ルルは静かに部屋を出ていった。

 待ちかねたように公爵が聞く

「彼女はもしかして、刺繍の?」

「はい。半年前、魔獣の森で発見されたんです。記憶を失っているのですが」

 カンタンの部下に発見されたときの状況を説明した。

< 117 / 202 >

この作品をシェア

pagetop