復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 広い肩幅の堂々たる体躯。黄金の糸のような美しく煌めく髪は、帝国の皇帝グロワール一族の象徴だ。

 遠くからでもわかる、彫刻のように綺麗な顔立ち。

 甲冑は身につけておらず、マントと同様の黒い戦闘服を着ていて、マントの内側は赤く、大きな漆黒の馬がまるで血を被ったよう。

 ひらりと馬を降りた彼は、周りを取り囲む騎士に負けないほど背が高く、圧倒的存在感を漂わせでいる。

 ルイーズの隣で、母の頬を涙が伝う。

「皇后陛下。閣下はご立派になられましたよ」と、独り言のように呟いたとおり、彼は人の頂点に立つ威厳を全身から放っている。

(本当に輝くばかりだわ)

 食い入るように見つめていたせいか、ふいに彼がルイーズが見ていた窓を振り返った。

 その目が鋭く光った気がするが、レースのカーテンがあるため、彼から見えていないはず。

 前世ではとっさに隠れて、ブルブルと震えたが、今は違う。

 懐かしさを秘め、ルイーズはドキドキと胸を高鳴らせた。

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