復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 父もまた公爵家の嫡男として令嬢たちの憧れの的であったから多くの縁談があった。政略結婚ならばほかの令嬢を選んだはずだが、父はデピュタントでの母に一目惚れして、想いを遂げた。

 母の実家は貧しい男爵家であったから玉の輿であるが、母もまた騎士として名を馳せていた父に憧れていたというから、ふたりは貴族社会では珍しい恋愛結婚であった。

 晩餐の席でも母を気遣う父を見て、ルイーズは泣きそうになるのを堪えた。

「閣下、あとひと息ですね。いつでも出陣できるよう準備をしておきます」

 西国との戦争が終わらない限り、父が戦地へ向かうのは仕方がないことだった。

 母の病状を思えばずっと一緒にいて欲しいが、そうはいかない。心でため息をつき、スープにスプーンを伸ばす。

「師匠には帝都にいて欲しいのです」

 彼は剣の師匠でもある父に対し、変わらず礼儀を尽くし、私的な会話では師匠と呼び、敬語を使う。

「えっ? いえいえそういうわけには。共に戦います」

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