復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 もしや母の病気を気遣ったのかと、ハッとした。

 ルイーズだけでなくマリィもそう思ったのだろう、驚いたようにアレクサンドを振り向いた。

「宮殿や貴族たちの動きを偵察してくれませんか。俺には信用できる味方が師匠しかいないですから」

「なにか気になることでも?」

 アレクサンドは頷く。

「ランベールの動きが気になります」

 それから少しだけ政治的な話になったが、ルイーズは身震いした。

 ランベール公爵家は亡き皇妃、皇太子ディートリヒの母の実家である。

 皇妃はアレクサンドの母を陥れたと噂されていたが、自身も不慮の事故で亡くなっている。今の皇室はそういうところだ。

 毒殺に不慮の事故。

 宮廷とはルイーズにとってこの上なく恐ろしい場所だった。

 実は皇太子ディートリヒの妃候補として、自分の名前が挙がっているのは知っていた。帝国の貴族の中で最も位の高い公爵家で、ちょうど年頃の娘なのだから当然とはいえ、皇太子妃にはなりたくない。

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